変わらないものがある。
そう信じたい。
でも、本当は
雲間から射す日が刻一刻と変化していくように、
炊きたてのご飯からもくもくとあがる湯気のように。
変わらないものもある。
そう信じよう。
人の気持ちも
今ある幸せも
フレンチトーストも。
今日、いつものようにフレンチトーストを目がけて
いつものパン屋へ。
今日は何があるかしら、そ知らぬ顔して入店するも、
即座にフレンチトーストの有無を横目で確認。
これ必須。
いつも、体育座りで整列してるかのようにきれいに並ぶ三角パンのフレンチT。
見渡しても見渡してもその愛らしい御姿が目に入らない。
おかしいなにかがおかしい。
あせって見渡すとそこには、
何食わぬ顔で「大人気!フレンチトースト」同じポップに
同じ値段を掲げられ、鎮座している長方形レーズン入りフレンチT。
軽くめまいがするも、とりあえず3つ購入。
いい加減つっこんできてくれないかなぁと思いながら
照れ半笑いでフレンチTをバカ買いする私を、
いつもしれーっと対応してくれるパン屋のお姉ちゃん。
その、お姉ちゃんの確固たる壁を、ぶち壊すかのように
「フレンチT、パン変わったんですか?」
勇気を出してクエスチョン。
「え、あ、はい。時々レーズン入りのも出るんです。
申し訳ございません。」
いや、謝らないでいいのよ。
このレーズンフレンチTが、今までのクオリティ維持してくれさえすれば
謝らないでいいのよ。
いや待てよ、このお姉ちゃん時々って言ったゾ。
てことはまたもともとのフレンチTも出るってことか。
ふむふむ。
「あ、いいんですいいんです。またいつものも出ますよね。ハハ ハ...」
レシートも受け取らないで退店。
お昼休憩時、あのお姉ちゃんの陳謝が活きる活きない判決の時。
体育座りFTを食す際、片時も置くことのないくらいの勢いでほおばっている。
食べ終わるにつれて、別れを惜しむほどの一品。
ひとつじゃ足りないよーう。
(バカ買いはしてもバカ食いは致しません。)
ふわふわのもちもちの、ほどよいフレンチT液しみこみ具合。
それに対しこのレーズンFT。
若干パンの目(?)が粗く、どちらかというとほろほろしている食感。
極端に言えば、ぱさつきのあるパンだ。
また、レーズンの味もよくしている。
それにより、フレンチT液しみこみ具合がまだらで、
場所によってはレーズンパンを食べているかのようだ。
ひとつで充分だよーう。
食べている間、何度も置いた。
活きた。
レーズンFTはレーズンFTで、おいしかったのだけれど、
やはり体育座りFTのうまさには到底敵わない。
どうか、どうか、これからもずっと、
体育座りFT用パンが余って、翌日には大量の愛らしい体育座りFT
が並んでいますように。
変わらないものがある。
そう信じよう。