「バナナは皮を食う」
という本を読んだら、おにぎりとお漬物が無性に食べたくなり、
そして何か食べ物について書きたくなった。
私が好きな食べ物を聞かれたら、「鶏肉」と答える。
小さい頃から唐揚げが大好きで、
少し大きくなってきたらつくねが大好きになり、
そしていい大人になってきたら鶏の照り焼きが大好きになって、
そこまできたら、なんや、私は結局鶏肉が好きなんや、とやっと気づいて、
それからは好きな食べ物を聞かれたらすかさず「鶏肉」と答える。
あぁ手っとり早い。
その鶏肉メモリーズにある中でも、もっとも印象的な鶏肉料理は、
おばあちゃんが作ってくれた「鶏肉を生姜で焼いたやつ」だ。
4歳まで祖父母と一緒に住み、歩いて20分くらいのところに家族で引っ越してからも、
毎週日曜日には祖父母宅で晩御飯を食べるのが我が家の習慣だった。
母もおかず持参で行ってたけれど、
いつもいつもおばあちゃんは色んな料理を作ってくれていた。
そんなおばあちゃんがレシピを見て作っている姿は、私の記憶では、一度も見たことがない。
いわば目分量の創作料理。
それがたまらなくおいしいのだ。
ちょっと多い目の油を、結構強火で熱し、そこに鶏肉を投入。
油がバチバチはねるのも気にせずすばやい手つきで鶏肉をひっくり返す。
そこからはどうやって作っていたのかは、覚えていない。
たぶん入ってたのは、おしょうゆと生姜のすりおろし、くらいだと思う。
手際のいいおばあちゃんの料理は、あっという間だ。
油とお醤油とが絡み合ってなんとも良い匂い。
生姜がその香ばしさに煽りをかける。
焦げ目のついた鶏肉はかりっとしてぶりっとしてる。
もう、出来上がった時点から、つまみ食いの限度を超えるほどのつまみぐい。
食卓に並ぶころには私の取り分はすでにつまみ食いによってほぼ終了しており、
周囲の目を盗んでちょびちょびつまむ程度になってしまう。
いつかおばあちゃんに私一人のためにこれ作ってもらいたいなー
などと願ったこともあった。
今ではおばあちゃんは足腰が弱くなってしまい、
料理をすることはもうない。
レシピなんてあるわけないし、
残っているのは私の舌の記憶のみ。
しかも鮮明な記憶が。
今思い出してもよだれがでる。
絶対にまた食べたい。