一冊の本を読み終えたその手で、また最初から読み始めた本は
この「
Never Let Me Go」が初めてだった。
洋書を読んだ為、細かいところまで理解できなかったからというのもあるけれど、
それだけではなかった。
私はこの物語が醸し出す雰囲気から、一回読みきっただけでそうやすやすと出て行くわけにはいかなかったのだ。
この本のテーマの大きな部分として「臓器移植の為の生」があげられるだろう。
主人公はキャシー・H。彼女の幼少時代から現在までの回想録。
キャシーはヘールシャムという施設で保護者(先生のような存在)に育てられ、教育を受ける。
この施設で育てられる子供達はみんな、臓器移植の為だけに生み出されたクローンなのであった。
自分達が’普通の人とは違う’ことや将来定められている道(色んな臓器を移植する)は、
彼らにとっては当然のこととして育てられてきた。
普通に考えたら背筋がぞわっとするような、倫理的な問題を追及せざるを得ないことを、
当然のこととして捉えているこの世界。
私はこんな、ある一種の特有なイデオロギーを基に成立している空間・団体、に興味を惹かれる。
ま、広く言えば学校とか家庭とかもそうなってくるだろうけど。
外から覗けば特異な雰囲気をかもし出している空間に、
この本を開いたとたん引きずり込まれる。
移植の為の臓器を備えられたクローンにはもちろんそれぞれ人格があり、人生がある。
内臓にガタが出てくる年齢(正確にはいくつからかわからんが・・)までにはありとあらゆる臓器が移植され、
生きる為の臓器は無くなっていってしまう。
そのような将来を、受け入れるというよりも当たり前としているクローンたち。
葛藤はあった。
でも抵抗はしなかった。
抵抗することを知らずに育てられた子供たち。
「育つ環境」の底力にただただ呆然とする。
生の裏側を見たときの儚さ悲しさ、抵抗を知らない恐ろしさ。
そんないろいろが合い混ざって醸し出される雰囲気を味わうため、
私はきっとまたこの本を開く。